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第7回 ああ、いいなあ・・・。 FIAT 124 Spider


【森 慶太】
1966年静岡県生まれ。
筑波大卒。
自動車雑誌編集部を経て96年からフリーランスに。
著書に、「乗れるクルマ、乗ってはいけないクルマ」(三笠書房) 「『中古車選び』これだけは知っておけ!」(三笠書房) 「買って得するクルマ損するクルマ―新車購入全371台徹底ガイド」 (講談社)他多数。最近、子供も生まれ、家も建て、ますます精力的に世界中を飛び回っている。


 22歳で免許を取り、自動車雑誌『NAVI』に入社したときにはバリバリの若葉マーク。
廃車寸前の86レビンで夜毎筑波パープルラインに通い、みるみる運転の腕前を上げていった若き日の森慶太は、それから10余年、今や気鋭の自動車ジャーナリスト。
明快な論点、みずみずしい視点、の森慶太が駆る。イタリア車ははたしてどうなのか。



ロシアとの接点

FIAT 124

LADA
 

フィアット124スパイダー。末期はピニンファリーナ・スパイダー・ヨーロッパという名で主として北米向けに売られたこともある。1966年(旧アルファ・スパイダーと同じ年)から1985年。昭和でいうと、41年から60年。その時期がちょうど生まれた年と大学入った年までにあたる。35歳の私にとっては「あったよねえ、そんなクルマも」の典型的な1台だったわけだけど、なんと友達が1台買っていた。84年モノとかだそうだ。で、当コラムのネタ用に乗らしてもらおうとクルマをトバして藤枝までいってきた。静岡県藤枝市。

 124スパイダーとはいったいどんなクルマ?と、ここを読んでいる人のおそらく63%ぐらいはそう思っていらっしゃることでしょう。雑誌なんかの仕事でも、こういう珍しくて古いクルマを紹介するときはかならずそのへんのことを書けといわれる。登場年やスペックを資料からひき写して書いたところでクルマの性格なんてロクにわからんだろうにと思うので、本格的に詳しく知りたい人はインターネットとか洋書で好きなだけ調べてください。ま、見たとおりのクルマですよ。

 まずフィアット124というクルマが1966年に出た。これはナニかというと、簡単にいってFRの四角い(いやもうホント見事に四角い)セダン。全長が4m3cmであるのは同年出た初代カローラと同じだけれど、でもカローラのほうがはるかにカッコいい。

 まだしもわかりよいところでは、たとえばロシアの路上にウジャウジャいるラーダのセダン。早い話、あれが124。冗談抜き、生産設備をトリノから当時のソ連はモスクワ近郊に移して作ったクルマだから。それ用に工場の建物も作ったんでしょう。ということで、いい機会だから出た当時のラーダと124の写真を両方並べてご紹介。ご覧のとおり、どっちがどっちかわらかないほど似ている。

 124は、ソ連でも作るからということでこういうカタチになったのかもしれない。それか、資本主義的堕落からきわめて遠いところにいるその姿が「革命的でよろしい」と党首脳部のおぼえがメデタかったのかもしれない。ちなみにそのラーダ版、ノバあるいはシグリの名でおそるべきことにまだ現役モデルだ。


トランクは広いが浅い。なにしろカーペットの下はスペアタイヤと燃料タンク。あと、ご覧のとおりバッテリーがこっちに配置されている。重量配分、気つかってるのね。
インジェクションだったのがキャブに換装されている。あと、ベルトがムキ出し。でもこれでちゃんと車検通ったそうだ。

オーナーがインターネットのオークションで手に入れたアメリカ仕様の取説。
ドアハンドルはアルファ・スパイダーと同じもののようだ。

サラブレッドではないけれど

リアサスのクローズアップその1。写真暗くてゴメンなさい。

リアサスのクローズアップその2。内側のアームとアンチロールバーが見えますか?

フロントサスのクローズアップ。
 

124系のリアサスは独立懸架じゃないけどコイル+5リンクで、つまり板バネ式よりは新しくて、一方フロントサスはダブルウィッシュボーン。でモノコックボディ。おそらくオールニューで出たのだろうけど、当時としてはごくごく普通の特に古くも新しくもない設計だったといっていいと思う(その点、カローラはフロントサスにマクファーソンストラットを使っていた)。で、そこは今回のスパイダーも同じ。サラブレッドよりもばんえい競馬に近いと。

 なお、マクファーソンストラットのマクファーソンというのはこの方式を考案した人の名字。フォードかどこかにいたエンジニアで、ロワーのみのアーム+ステアリングキングピン(とあとバネの受け皿)を兼ねるダンパーストラット、という簡潔な構成は要するに部品点数が少なくて軽量でイイと。合理化できてメーカーがモーカるし、フリクションも減るから乗り心地もよくなると。それに、ジオメトリーの変化特性も素性が悪くないと。いまではすっかりアタリマエの方式だけど、60年代の自動車テクノロジー界ではけっこう革命的だったのですよ。いってみれば、レストランで料理人にホールやソムリエの仕事もかけもちさせちゃうような発想が。

 ということで、ご参考までに124スパイダーの前後サスまわりの写真もご紹介。写真はないけど、たとえばフロントまわりは旧アルファ・スパイダー(1962年〜のジュリア系そのもの)と較べると見た目にスッキリわかりやすい。リアまわりを見ても、さすがに伸び側のストロークをバンド(というかワッカ)で規制したりはしていない。横方向はしっかりとパナールロッドが支えているので、左右1本ずつの前後方向アーム+デフのところを前から吊ってるだけのアルファと違って後車軸のユラユラ(あれはあれでアジも意味もあるけれど)はないでしょう。車体側につけられたバンプストップラバーと、ほかにごく細いアンチロールバーが見える。

 124のホイールベースは2280mm。セダンの場合より140mm短くて、絶対的にもハッキリ短い(旧アルファ・スパイダーは2250mmとさらに短い)。マツダ・ロードスターより1.5cm長いだけ……なのにリアシートらしき場所がちゃんとあるのは、ひとつにはエンジンや乗員の位置がクルマ全体のうちわりと前のほうに寄っているから。それと、燃料タンクがトランク左下にあるから(ロードスターの場合は幌を畳み込む場所の下のほう)。

 車検証記載値で1080kgの車重は、これまた簡単にいってロードスターなみ。でもって、エンジンは2.0。アウレリオ・ランプレディさん設計のベルト駆動ツインカムは、デルタ・インテグラーレやテーマのターボに乗っていたユニットと系列としては同じもの。試乗車は、もともとインジェクションだったのが都合(おそらくコワれたのをてっとり早く安くなおすため)によりキャブに変更されていた。このテにはありがちなケース。

 おおスポーツカー! というにはちょっとジミめであるけれどそれだけに玄人好みでかつ味わい深い、そしていかにも煮たらよくダシの出そうなスタイルはbyピニンファリーナ。ご存じのとおり旧アルファ・スパイダーをやったのと同じとこ。その2台を較べるかぎりは明確なキャラの作り分けがされていたのだなと思えるけれど、でも124スパイダーはプジョー504カブリオレとはけっこうソックリ。特に、全体のプロポーションと後ろ姿が。アルファ164とプジョー605のニアミス事件を指摘するまでもなくピニンの作品にはよくあることで、書く媒体によって文体があっちゃこっちゃ変わる私とは心構えが違うという。




旧アルファ・スパイダーより上!?

幌を畳むと、リアクオーターウィンドウはこのようにして隠れる。


最近のクルマと違ってスゴくガッチリした作りというか素材のプラスチック。ほしくなる。
 

幌を開けるのはものすごく簡単。前方二カ所のロック(旧アルファ・スパイダーのヤツより作りはいい)を外してバタン、で終了。バックライト部分のビニールを幌本体から切り離す必要はない。それでいて、畳んでおいても透明ビニールにはヘンな折りグセがつかない。優秀な設計。あと、オッと思ったことにガラスのリアクオーターウィンドウは幌を畳むと自動的にそれといっしょに見えないところへ入ってくれる。さりげに凝った設計。

 幌開けてドアの窓を下げたはいいけどその後ろのガラスが出しっぱなしで無様、というケースを、プジョー306やVWゴルフやBMW3シリーズのカブリオレでたまに見かける。あれはツラい。カッコつけてナンボ(もちろんそれだけではないにせよ)の屋根開きグルマなのに、かえってみっともない。

 乗った感じはいい意味でフツー。というのはまず、運転しやすいから。さすがはフィアットというべきかエンジンのトルクが下からかなり濃厚で、ギアレバーがわりと小気味よくキマって、でもって運転ポジションも別にヘンではなくて。初見でも戸惑わない、という点ではFR時代のアルファ・スパイダー(たとえ最終型であっても)よりもはるかに優秀。パワステはなしだけど、こないだのA112と違ってブレーキもちゃんとサーボがついていた。ちなみに、こないだ乗ったニーナナのレビンはサーボなしだった。普通に効いたけど。

 クルマの動きは、これまたいい意味でフツー。フツーでありつつ、適度にタフな手応え。ヌケヌケのダンパーのおかげもあったかヨレヨレでない車体。ことさら敏感だったり、あるいは人車一体になるためにコツをつかむ必要があったりとかが別にない。サラブレッドな感じがないといえばそうだけど万人向き。
 妖精の飛翔や名ダンサーのワルツを体験したい人はエランやアルファ・スパイダーを選べばいい。ベアナックルのファイトがお望みならばスーパーセブンをどうぞ。いくとこいけば、そんなのいくらでも売っている。でもこういうのはかえって貴重。「ああフィアットだ。イイなあ」と、私あたりは思ったものでありますよ。だいたい、昔のクルマというだけですでにアジは十分に濃い。それ以外にコマい能書きはいらない。というか、本当はこれだって十分能書きにあたいする。

 あとはそう、オープン環境が素晴らしい。ウィンドシールドの角度形状といい、あるいはAピラーの太さや細さといい最高にイイ。このへんもまた、いまのクルマにはちょっと望めないところだ。キャビン開口部がガバガバに広くないのもやはりイイ。オープンになる古いクルマとくると、よっぽどイビツなシロモノでないがぎり誰が乗っても楽しい。

 というわけで、これから先124スパイダーの実車を体験できる人がどれだけいるかというのはあるけれどクルマはヨカッタ。万が一物件に出会ってほしくなってしまった人は、その点心配しなくていい。覚えといてね。






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